胆のう結石

胆のう結石とは

胆のう結石とは、「胆のう」に石(結石といいます)ができた状態です。石の正体は、胆汁に含まれている成分が凝縮、結晶化され、石のように固まったものです。
胆汁は脂肪分やビタミンの消化・吸収を助ける働きがある消化液です。肝臓で作られた胆汁は、肝臓から十二指腸まで通る「胆管」、一時的に胆汁をためて濃縮、食事に伴って胆汁を出す「胆のう」、膵臓からのびる膵管と合流し、開口部の括約筋で胆汁の流れを調整する「十二指腸乳頭部」を通り、十二指腸に流れ出ています。この胆汁の通り道を「胆道」といい、胆道にできる結石を総じて「胆石」といいます。石ができるか場所によって、肝内結石、胆管結石(総胆管結石)、胆のう結石という名前になります。
結石は、構成される成分により、「コレステロール石」と「色素石」に分けられ、色素石は「ビリルビンカルシウム石」と「黒色石」に分けられます。日本人の多くはコレステロール石で、食生活の欧米化や高齢化を要因として増加傾向にあります。特に女性に多くみられる病気です。

胆のう結石の症状

胆のう結石でよくみられる自覚症状は、右の肋骨下辺りの差し込むような痛みです。肩や背中に抜けていくような「放散痛」と呼ばれる痛みや、みぞおち辺りの痛みを伴うこともあります。人によっては、腰や右の肩甲骨あたりに痛みが出たり、鈍痛や凝りのように痛むこともあります。特徴的なのは、こうした痛みは食後に出ることが多いという点です。また、胆のう結石を持つ人のうち23%は症状が出ないともいわれています。
痛みのほか、「黄疸」がみられることがあります。皮膚や目の白い部分が黄色くなる症状です。黄疸になると褐色~黒色の尿「ビリルビン尿」が出たり、皮膚に痒みを生じることもあります。 結石によって胆汁が流れなくなり、胆汁の成分が胆のうを傷つけてることで細菌感染を起こすこともあり、高熱が出たり、炎症が進むことで「急性胆のう炎」になることもあります。

胆のう結石の原因

胆のう結石ができるはっきりとした原因は分かっていませんが、胆汁を構成する成分(胆汁酸、コレステロール、胆汁色素のビリルビン)のバランスが崩れることが結石の原因ではないかと考えられています。胆のう結石は、コレステロール石と色素石の2つに大別することができますが、コレステロール石は胆汁成分中のコレステロールの濃度が高くなって結晶化することで結石ができるとされています。色素石のひとつビリルビン石は、胆汁の感染などビリルビンの濃度が高くなる状況が結石の原因の一つになるとされています。また、胆のうの働きが低下し、胆汁の動きが滞る「うっ滞」も、結石の原因になると考えられています。
これらは生活習慣と密接に関わっており、肥満や脂質異常、糖尿病などの生活習慣病に気をつけることが大切です。日本人の胆石の多くは、コレステロール石です。特にコレステロール石ができやすい人の特徴として「Fatty(太った)」「Female(女性)」「Forty(40歳台)」「Fair(白人)」「Fecund(多産婦)」の頭文字をとって「5F」と言われています。40歳を超えた女性は女性ホルモンが減少によってコレステロールの代謝が悪くなるため、肥満傾向になりやすいためです。加えて近年は、検査方法の発達や検診や人間ドックなど普及によって、結石が見つかりやすくなっていることもあり、男性患者も増加しています。
そのほか、遺伝性の病気で胆石ができやすい、胆のうがんの人に胆のう結石がある頻度が高いことがわかっています。

胆のう結石の検査

胆のう結石を疑った場合に行う検査は、次のとおりです。

  • 血液検査
  • 腹部レントゲン検査
  • 腹部超音波検査
    胆のうの壁が変形したり厚くなったりしていて腹部超音波検査では難しいケースでは、次のようなより詳しい検査を行います。
  • 腹部(造影)CT検査
  • MRI検査/MRCP検査
  • 超音波内視鏡(EUS)検査
    内視鏡を挿入し、胃や十二指腸から壁の向こう側にある胆のうや胆管に超音波をあてて至近距離で確認することができる検査です。
  • 内視鏡的逆行性胆道造影(ERCP)検査
    内視鏡を口から挿入、胆管や膵管に造影剤を注入しレントゲン撮影を行い、胆のうや胆管などの異常を詳細に調べることができます。
  • 経静脈的排泄性胆道造影(DIC)検査

胆のう結石の治療方法

胆のう結石の治療は、内科的治療と外科的治療の2つに分けられます。 痛みなどの明らかな症状のない「無症状胆石」については、治療は行わず定期的な経過観察とします。定期的に経過をみていくことで、胆のうの壁に変化が無いかを確認することができ、胆のうがんの予防や早期発見につながります。
胆のう結石の治療は、基本的には胆のうごと摘出します(外科的治療)。結石だけを取り除いても、結石ができやすい環境は変わらないため再発することが多く、再び治療をすることになるためです。外科的治療の第一選択は、腹腔鏡下胆のう摘出術です。傷口が小さく術後の痛みも少ないため、早期に日常生活に戻ることが可能です。ただし、胆のうが炎症によって癒着している、胆のうがんの合併を疑われるなど、腹腔鏡下での手術が難しいケースでは開腹手術を行います。
内科的治療では、コレステロール石に対しては胆汁酸製剤の服用で結石を溶解させる治療方法があります。胆のうの収縮機能が正常で、石灰化がなく大きさ15mm以下の場合が適応となります。この治療法は再発防止のため、結石が溶けた後も継続的に服薬を続ける必要があります。