潰瘍性大腸炎とは
炎症性腸疾患では、この潰瘍性大腸炎とクローン病が代表的な疾患です。大腸粘膜に慢性的な炎症を起こし、びらんや潰瘍などを生じて症状が現れる活動期と症状のない寛解期を繰り返します。炎症の広がり方によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型、右側あるいは区域性大腸炎型に分けられ、症状も変わります。主な症状には下痢や血便がありますが、重症化すると栄養の不足や貧血などを起こすこともあるなど炎症の状態によってさまざまな症状を起こします。
発症ピークは男性20~24歳、女性25~29歳で、20~30歳代の発症が多い傾向がありますが、子どもから高齢者まで幅広い年代の発症があります。原因がはっきりわかっていないため完治できる治療法がなく、厚生労働省により特定疾患(難病)に指定されていますが、炎症を抑えることで状態をコントロールする治療が可能です。
原因
はっきりとした原因はわかっていませんが、複数の要因によって異常な免疫応答を引き起こして発症していると考えられています。近親者に炎症性腸疾患がある方の発症が一部に確認できることから、遺伝的な要因も関係していると指摘されています。免疫などに関する遺伝子で、発症に関連していると思われるものがいくつも発見されています。その多くがクローン病発症にも共通していると考えられています。
食生活などの環境も発症と関係している可能性が示唆されていて、日本では衛生環境が改善されて食生活が欧米化した近年になって潰瘍性大腸炎の患者数が増加してきています。
症状
潰瘍性大腸炎では、下痢、血液や粘液が混じった粘血便という症状を起こすことが多く、腹痛や残便感、トイレの回数が増えるなどもよくある症状です。炎症が大腸の上部に広がっていると軟便や排便回数の増加が起こりやすくなるなど、炎症の広がりによって現れる症状も様々です。
重症化した場合には、炎症範囲が広くなることで栄養を十分に吸収できなくなるため体重減少を起こすこともあります。また、出血が増えて貧血になる、発熱を起こすこともあります。腸の狭窄や閉塞などを起こす可能性もあり、炎症が長期化すると大腸がんリスクが症状するため、定期的な検査が不可欠です。
検査・診断
慢性の粘血便や下痢、腹痛といった潰瘍性大腸炎の症状は、感染症や薬剤性の腸炎でも起こります。そのため、問診で投薬歴や家族歴、海外渡航などに関するお話を伺った上で、細菌学的検査や寄生虫学的検査などを行って、それに関する疾患の可能性がないことを確認します。
次に、大腸カメラ検査を行って大腸粘膜の状態を直接確かめます。潰瘍性大腸炎には潰瘍や出血しやすさ、浮腫性の粘膜、血管透過性の低下などの特徴があるため、それを確認します。また、疑わしい部分があった場合には検査中に組織を採取して回収し、病理検査を行います。
治療
炎症を改善して良好な状態を保つための治療を中心に行います。使用する薬剤は炎症が起こっている場所、重症度、そして炎症がある活動期か、炎症のない寛解期かによって変わります。
炎症がある活動期には、状態に合わせて炎症を抑えるための内服薬、注腸剤、ステロイド注腸などを行います。症状が重いケースではステロイドでできるだけ短期間に使ってスピーディに炎症を改善させ、炎症がない寛解期になったらその状態をキープするための薬を用いて継続的な治療を行っていきます。完治に導く治療法はありませんが、良好な状態を長く続けられるようコントロールすることは可能で、治療の進歩によって抗TNFα抗体製剤などによる治療も積極的に行われるようになって、より効果的な治療が可能です。しっかり治療を続けて、いい状態を保っていけるようにしましょう。
なお、こうした保存的療法で十分な効果が得られない場合や、病変のがん化が確認された場合、薬物療法による副作用が懸念される場合などでは外科手術が必要になる場合があります。